ETFと個別株、どちらが日本人投資家に向いているか|10年の経験から比較解説


この記事を読んでわかること

  • ETFと個別株のリスク・リターン・必要時間の実際の違い
  • 日本人給与生活者にとって現実的な選択肢はどちらか
  • eMAXIS Slim等の低コストETFの使いどころ
  • 著者が実際にどう組み合わせているか

投資を始めて10年超が経ちます。その間に私が最も多く受けてきた質問のひとつが「ETFと個別株、どっちがいいですか?」です。

結論から言うと、どちらが絶対に優れているということはない。大事なのは、あなたのライフスタイル・投資目的・使える時間によって選択が変わる、という認識です。この記事では、両者を徹底比較したうえで、私自身のポートフォリオがどう構成されているかもお伝えします。


ETFとは何か:まず定義を整理する

ETF(Exchange Traded Fund=上場投資信託)は、複数の株式や債券をまとめてパッケージ化し、証券取引所に上場した金融商品です。個別株と同じようにリアルタイムで売買でき、かつ投資信託の分散性も備えています。

代表的なETFには以下があります。

ETF名 ベンチマーク 信託報酬(年率) 特徴
eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン) MSCI ACWI 0.05775% 世界47か国・約3,000銘柄に分散
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) S&P500 0.09372% 米国大型株500社に集中
日経225連動型上場投資信託(1321) 日経225 0.22% 日本の主要225銘柄
NEXT FUNDS TOPIX連動型(1306) TOPIX 0.132% 東証プライム全銘柄

一方、個別株投資は特定の企業1社の株式を直接購入するものです。トヨタ自動車(7203)、ソニーグループ(6758)、三菱UFJ(8306)など、企業ごとに分析・選別して投資します。


5つの軸で徹底比較

1. リスク(値動きの振れ幅)

個別株は1社の業績・不祥事・経営者交代などで株価が30〜50%以上動くことがあります。2022年に東芝が非上場化した際、直前の数か月で株価が大きく変動しました。2024年には大手広告代理店でハラスメント問題が発覚し、株価が一時20%超下落しました。

ETFは数百〜数千社に分散しているため、1社が経営危機になっても影響は限定的です。2020年のコロナショックでも、eMAXIS Slim S&P500は底値から半年以内に完全回復しました。

リスクの実測値(年率ボラティリティの目安)

資産 年率ボラティリティ
日経225 ETF 約18〜20%
米国S&P500 ETF 約15〜17%
トヨタ自動車(個別株) 約22〜28%
小型グロース個別株 40〜60%以上も珍しくない

2. リターン(収益の可能性)

長期的なデータで見ると、プロの機関投資家でも80%以上はインデックスETFに負けるというのが実態です(S&P SPIVA調査、2023年版)。日本の国内公募株式型ファンドでも、15年超の期間では約85%がベンチマーク(TOPIX等)を下回っています。

しかし、個別株で卓越したリターンを得た例も存在します。2013〜2023年の10年で、任天堂(7974)は約8倍、レーザーテック(6920)は一時100倍を超えました。こうした「テンバガー(10倍株)」は個別株投資でしか得られない体験です。

現実は厳しい。10年間で市場平均を継続して上回れる個人投資家は全体の5〜10%程度とされています。私自身、個別株で大きく外したことも数回あります。後述しますが、それがETFを軸に据えた理由のひとつです。


3. 必要な時間とリサーチ量

個別株で市場平均を上回るためには、以下のような作業が必要です。

  1. 四半期決算の読み込み(年4回)
  2. 競合他社との比較分析
  3. 業界トレンドの継続的なウォッチ
  4. IRニュースのモニタリング
  5. チャート分析(テクニカルを使う場合)

これを複数銘柄にわたって行うと、週に5〜10時間以上は必要になります。

ETFの場合、一度積立設定をしたら基本的に毎月の積立額を確認する程度で十分です。リバランスも年1回のペースでOK。忙しいサラリーマン・共働き家庭には圧倒的な時間効率です。


4. コスト(見えない損失)

個別株は株数単位で売買するため、少額分散が難しく、また売買手数料が積み重なります。信用取引を使えば金利コストも発生します。

ETFのコストで見落とされがちなのが信託報酬です。eMAXIS Slimシリーズは0.05〜0.1%台と超低コストですが、アクティブ型の投資信託になると1〜2%台のものもあり、20年保有で最終資産が20〜30%変わります。

信託報酬の長期影響シミュレーション(月3万円を20年間積立)

信託報酬 想定利回り(実質) 20年後の試算資産額
0.06%(eMAXIS Slim) 年率5% 約1,232万円
1.0%(一般的な投信) 年率4.06%(実質) 約1,102万円
2.0%(高コスト投信) 年率3%(実質) 約981万円

20年で約250万円の差が生じます。コストの低さは長期投資の最重要パラメータのひとつです。


5. 精神的負担(これが一番大事かもしれない)

個別株を保有していると、決算の週は落ち着かないという方が多いのではないでしょうか。私も経験があります。2017年に信じていた小売企業の株を保有していたとき、決算で大幅減益を発表し翌日ストップ安。含み損が一瞬で30%を超え、仕事中も頭から離れませんでした。

ETFを軸にしてからは、個別株の保有比率を意図的に下げ、精神的な安定が劇的に改善しました。長期投資を続けるうえで、夜よく眠れるポートフォリオを持つことは非常に重要です。


どんな人にETFが向いているか

以下の特徴に当てはまる方には、ETF中心の投資をおすすめします。

  • 本業(仕事・育児・介護)が忙しく、投資に割ける時間が週2時間未満
  • 投資を始めたばかりで財務諸表の読み方に不慣れ
  • リスク許容度が低く、急落時にパニック売りしてしまいそう
  • NISAの積立枠(年120万円)を効率よく使いたい
  • 「市場平均を上回ることより、市場平均に乗り続けること」を優先したい

どんな人に個別株が向いているか

逆に、以下のような方には個別株投資が向いています。

  • 特定の業界に深い知識や勤務経験がある(医療・IT・不動産等)
  • 企業の決算書を読むことが苦にならない、むしろ楽しい
  • 市場平均を大きく上回るリターンを目指したい
  • ある程度まとまった資産があり、1〜2銘柄が大きく下落しても許容できる
  • 投資自体が趣味・知的好奇心の対象になっている

ハイブリッド戦略:私の実際のポートフォリオ

10年以上の試行錯誤の末、現在の私のポートフォリオはこうなっています。

コア(全体の70%):ETF中心

  • eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン):30%
  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):25%
  • 日本株ETF(TOPIX連動):15%

サテライト(全体の30%):個別株・テーマ型

  • 日本の高配当株(商社・金融):15%
  • 成長株(AI・半導体関連):10%
  • IPO当選銘柄の短中期保有:5%

このハイブリッド戦略の発想は、「コアをETFで守りながら、サテライトで上乗せを狙う」というものです。コアが市場平均並みのリターンを確保しつつ、サテライトで追加リターンを狙います。サテライトが外れても全体への影響は限定的です。

IPOについては、SBI証券・楽天証券・野村証券を使い、複数の証券会社から申し込むことで当選確率を高めています。過去には野村証券でのIPO当選で初値売りの利益を得たこともあります。こういった「一点突破の機会」も個別株投資の醍醐味のひとつです。


日本人投資家特有の注意点

為替リスクをどう考えるか

外国株ETFには為替リスクが伴います。eMAXIS Slim S&P500は円建てですが、実質的にドル資産を保有するため、円高になると円換算の評価額が下がります。

2022〜2024年の円安局面ではこれがプラスに働きましたが、円高転換時は逆風になります。日本株ETFをコアに入れることで、為替リスクの一部を国内資産でヘッジする効果があります。

確定申告・損益通算

複数の証券口座を使う場合、特定口座(源泉徴収あり)でも確定申告が必要なケースがあります。損失が出た年は損益通算・繰越控除(最大3年)を活用することで、節税メリットが生まれます。


まとめ:初心者はETFから、経験者はハイブリッドへ

比較項目 ETF 個別株
リスク 低〜中 中〜高
必要時間 月1〜2時間 週5〜10時間
潜在リターン 市場平均 市場平均〜大幅超
コスト 超低コスト(0.06%〜) 売買コスト+手間
精神的負担 低い 高い
向いている人 忙しい給与生活者・初心者 業界知識・時間のある投資家

投資に「絶対の正解」はありませんが、時間もリサーチ力も無限ではないという制約の中では、ETFを軸に据えることが大多数の日本人にとって最適解に近いと私は考えています。

個別株の醍醐味も否定しませんが、それはETFで資産の基盤を作ってから挑戦するのが安全な順番です。まずは月1万円でもいい、eMAXIS Slim S&P500の積立をNISAで始めることが最初の一歩です。


投資はご自身の判断と責任で行ってください。この記事は情報提供を目的としており、特定の投資行動を推奨するものではありません。